MES（製造実行システム）とは？導入メリット・導入課題の乗り越え方を解説！

製造業界では、製品の生産プロセスを効率的に管理し、品質を確保するためにMES（製造実行システム；Manufacturing Execution System）が広く利用されています。

MESは製造現場の中核を担い、生産計画の実行から製品の出荷までの工程を総合的に管理するシステムです。この記事では、MESの基本的な概念とその役割について分かりやすく解説します。

MESとは何か？

MESは製造プロセス全体を統合的かつリアルタイムに管理するための情報システムです。具体的には、生産計画の実行、作業指示の発行、原材料や半製品の追跡、作業者のパフォーマンスモニタリング、品質管理、および生産実績収集など、生産に関わるさまざまな活動を効率的に管理できるようになります。

そして、工場内の複数の工程や部門とのデータの収集と連携を可能にすることでリアルタイムな情報共有が可能となり、迅速な意思決定を支援します。これにより、生産計画の進捗に対する調整業務やトラブル対応が容易になります。

MESの主な機能

MESの主な機能は、MESAが提唱する11機能※が挙げられますが、ここでは以下の5項目で整理します。

1. 生産計画の実行

MESは生産計画をベースに作業スケジュールを作成する機能があります。詳細な作業スケジュールにより、計画通りに生産が進むようにサポートします。属人的な生産調整業務の効率化を図り、スケジューリングの最適化が可能になります。

2. 作業指示の管理

MESは作業指示を適切な生産設備に送信します。各設備の担当作業者はこれに基づいて実際の作業を進め、MESは生産進捗状況をリアルタイムでモニタリングします。

3. 実績分析

生産設備から収集したデータをベースに、サイクルタイムや稼働率の算出、設備停止の要因分析、作業者のパフォーマンス分析、良品率の算出と不良要因分析などをすることで生産性や品質レベルの向上に活用することが出来ます。

4. 品質管理

MESは製品の品質管理にも重要な役割を果たします。加工プロセスデータの傾向管理を行うことで品質レベルの安定化をサポートします。また、品質に関連するデータの蓄積と分析をすることで、良品条件の見直しや機器制御方法の見直しの検討が可能となり、将来的な品質向上に寄与します。

5. リアルタイムデータ収集と分析

MESはセンサーや生産設備と連携し、製造プロセスからリアルタイムなデータを収集します。これにより、問題が発生した場合にはデータ(事実)に基づいた対応が素早く実施でき、製品の品質不良や設備トラブルによるロスを低減し、製造プロセスの効率化を図ります。

※ MESA（Manufacturing Enterprise Solutions Association）が1997年に「MESA-11 Model」を提起。参考URL：https://mesa.org/topics-resources/mesa-model/history-of-the-mesa-models/

MESの導入メリット

MESの導入には多くのメリットがあります。その中でも以下のポイントが特に重要です。

生産効率の向上

MESは生産状況に応じて計画をリアルタイムに調整できるため、生産効率が向上します。無駄な時間や資材、エネルギーの浪費を最小限に抑え、生産コストを削減します。

品質レベル向上

リアルタイムな品質管理とデータ分析により、製品の品質レベル向上が実現されます。品質の向上は顧客満足度の向上にもつながります。

意思決定の迅速化

在庫最適化: 資材の適切な管理とリアルタイムな在庫情報の提供により、在庫の最適化が可能となります。これにより在庫コストを削減できます。

MESの導入課題とその乗り越え方

MESの導入には課題も存在します。その中でも代表的なものとその乗り越え方について考えてみましょう。

導入コスト

MESの導入には一定の初期コストがかかります。また導入前に投資対効果の分析が難しいという側面があります。

最近は、クラウドサーバーを使用することで初期費用や社内のITエンジニアの工数削減をすることも可能です。また、スモールスタートでPoCを行い、自分たちで効果を明確にしながらスケールアップや機能アップをするようなスケジューリングが出来るかどうかも重要です。

業務フローや作業内容の変更

出来る限り従来の業務フローを維持して、作業工数が増えないようにしたいニーズがありますが、システムのカスタマイズにコストと時間が必要となります。また、OSやシステムのバージョンアップのたびに再度カスタマイズが必要となるケースもあります。

導入するシステムに合わせて業務フローの見直しを検討することが大切です。また、作業者の皆様にとっては、今まで実施したことが無い新たな作業が発生し、また「生産状況の見える化」を「監視」と感じられてしまうケースもあるので、MES導入の目的と期待効果を丁寧に情報共有しながら無理のない計画策定とトレーニングを実施することが非常に大切です。

情報セキュリティ

生産データは企業にとって極めて重要な財産です。

MESの導入に際しては、適切な情報セキュリティ対策を講じることが必要です。データの暗号化やアクセス制限の導入などを考慮する必要があります。

まとめ

MESは製造業界において、生産プロセスの効率化と品質向上を実現するために不可欠なシステムです。生産計画の実行から品質管理まで、多岐にわたる機能を有しています。

その導入にはコストや業務フローの見直しなどの課題が伴いますが、これらを克服することで企業は大きなメリットを享受できるでしょう。MESの導入を検討している企業は、導入及び活用の計画と戦略を十分に検討することで、より効率的な製造プロセスを構築することができるでしょう。

製造実行システムProManageのご紹介

弊社は、ProManage社（本社シカゴ、開発トルコ）が開発販売する「製造実行システムProManage」を取り扱っております。ProManageはドイツ政府が主導しているインダストリー4.0をサポートしており、世界で500社の実績と信頼のある製造実行システム（MES）です。2021年からクラウド版をリリースし、これまでよりも、費用と期間を押さえて、導入しやすくなりました。